下北沢から新潟に移住『石丸靴工房』に潜入!ハンドメイドへの熱い想いを聴きました!

レトロな映画や小説の中だけの、とても原始的なイメージが浮かぶ「靴づくり」。人に本当に必要とされるただ一つのものを作りたい。時間をかけて自らの手で作り、日々の中で使う"良さ"を知ってほしい。普段何気なくする料理と同じ。心をこめて作ったものが"美味しい"ように、「靴」もそうでいい。親しみをこめ、もっと日常に寄り添った靴づくりがしたいという、熱い想いを持った『石丸靴工房』さんを訪ねてきました。

下北沢から新潟にやってきた『石丸靴工房』

今回は、20年住んでいた下北沢から2016年9月に新潟に移住し、フルオーダーの「靴」を作り続けている職人、石丸 奈央人(いしまる なおと)さんにインタビューしてきました。

ホームページを拝見させていただいたのですが、石丸さんはもともと東京の下北沢に工房をかまえていらっしゃったんですか?

はいそうです。下北沢って行ったことありますか?

ー あります!東京に遊びに行ったときには必ずと言ってもいいほど下北沢で古着を買います!オシャレなお店も多くて、都会すぎない且ついい立地にある…とても魅力的な場所ですよね。

そうなんですよ。下北沢って、大都市東京にありながら、そこまで近代的じゃないんですよね。いわば古きと新しきが混ざった独特な街。そこに僕は20年住んでいました。あの混沌とした感じが大好きでね…。

当時の下北沢は、音楽と独特なカルチャーがすぐそばにある変わった場所で、バンドマンや役者さんがそこらじゅうを歩いているくらいに刺激で溢れていたんですよ。今よりもっと混沌としていました。もちろん面白い個人店もいっぱいあったんです。

でも、最近ではチェーン店が建ち並びはじめ、昔ながらの個人店はなくなり、僕が好きだったかつての下北沢ではなくなってしまったなぁ…と寂しさを感じるようになりました。

音楽と演劇が側にあって、役者やミュージシャン、テレビで見るような人達が普通にスーパーで買い物している街。友達も思い出も沢山詰まっている街。 下北沢を離れて半年しか経っていないけれど、街の見え方はかなり変わっていた。不思議な感覚。 次はいつ来られるかな。 さて、新潟に帰ろう。 #新潟 #niigata #石丸靴工房 #ishimarushoes #靴 #靴作り #靴工房 #靴職人 #靴教室 #足元くら部 #足元倶楽部 #あしもと倶楽部 #革靴 #革靴女子 #下北沢 #ファッション #シンプルコーデ #カジュアルコーデ #shoes #shoestagram #shoesoftheday #新潟移住 #creema #minne

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ー 「作り手」として大事にしていたご自身の気持ちと、変遷していく下北沢という環境にズレが生じていった…ということですね。

はい。東京は大量生産・大量消費の地です。しかしながら僕としては、必要とする人のためにだけ作りたい一つのものを長く大切に使っていってほしい。その思いがとても強かったんです。この時代だからこそ大切にしなきゃいけないことだと思います。

ー 靴づくりをしようとしたきっかけは何だったんですか?

それが、僕、前職はファッション誌の編集をやっていたんですよ。場所も東京でその頃から下北沢に住んでいました。本当に天職だと思っていましたし楽しかったんです。

けれど、だんだん役職が上のほうに行くと分かってくることなのですが、これが楽しいことばかりじゃなくなってくるんです。本当にいいと思ってないのに利益獲得のために売らなきゃいけない。誰のために作っているのかも分からなくなる。次第に考えが変わっていき、自分が本当にいいと思ったものを直接人に届ける仕事がしたいと思うようになったんです。モノづくりだ!とね。

靴はファッションアイテムですし、“歩く”という日常生活にかかせない道具的側面を持っていて、人々の健康にも密接にかかわっているものですしね。

ー では、ファッション雑誌の編集のお仕事からすぐに靴職人に転職されたっていうことなんですか?

いや、そうじゃないんです。しばらくなにもしていなかったんです。どうしようかな~なんて考えながら…(笑)。取材で度々ヨーロッパに行っていたんですけれど、ぼんやりと今後のことを考えながら個人でもよく海外に行っていました。そこでたまたまアジアを旅していたときに刺激を受けましてね。あの原始的な雰囲気がたまらなく感性をくすぐるといいますか、現地の人はみんな個人店をかまえてモノを作っているんですよ。

それから少し経って30歳のときに、靴をつくる学校があることを知って入学することに決めました。そこからライターの仕事や派遣の仕事をしつつ、運よく下北沢で靴工房を開くことができ、今があるというわけです。

niigata port. 堤防沿いの遊歩道がとても気持ちいいんです。 #新潟 #niigata #港 #海 #komachi #sea #日本海

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ー そこからどうして新潟に?

新潟出身の女性と結婚したことが大きなきっかけです。奥さんのご両親の支援もしなきゃなと考えていました。男手も必要でしたし、なによりもっとゆるい環境で靴をつくりたいと思っていたこともあり、20年住んでいた下北沢を離れ、新潟に移住することを決めました。

ー 新潟に初めて来て、すごいと思ったことはありましたか?

ポテンシャルを秘めている場所だと思いましたね。新潟ってアートや演劇文化も精通しているじゃないですか。独特なカルチャーもあって、モノづくりが発達した地域。それに空気も水も田んぼも海も山もきれいですよね。僕は川を眺めるのが好きなんですけれど、新潟には信濃川があるじゃないですか。自然豊かで心地よいのに、新潟市はほどよく栄えてますし、生活するのに不自由しないですよね?新潟って本当にすごいところだなと思いました。

ー ハンドメイド靴へのこだわりを教えてください。

こだわりは牛革です。植物タンニン鞣し(なめし)を使っています。「なめす」というのは、動物の皮を剥がして叩いたり揉んだり乾燥させたりして、皮の繊維を分解する方法を言います。植物タンニン鞣しは、なめすのにシブを使っています。これは時間と手間を要する分、完成した革は硬くて丈夫、ハリやコシもしっかりとある革になるんですけれど、現在は化学薬品でなめしたクロム鞣しが主流になっているんです。時間と手間がかからない分生産コストが抑えられるんです。だから世の中の靴のほとんどはクロム鞣しが使われています。

ー 植物タンニン鞣しとクロム鞣しってどう違うのですか?

まずクロム鞣しの靴は水と日焼けに強く、色むらしないという強みがあります。軽くて柔らかく伸縮性に優れた革なのですが、使われている化学薬品には発がん性物質が含まれているんです。

植物タンニン鞣しの靴は、色が変わっていく人の生活が靴に移りこむ)という味わい深さがあります。経年変化を楽しみながら長く使える良質・上質・格上の革!赤ちゃんがかじっても安心ですし、より人の生活、そして健康に密着したモノをつくりたいと思っていた僕にとってこれは強いこだわりです。

ー 素材からこだわっていらっしゃるんですね!となると、相当な時間をかけてつくられていると思うのですが、一足をつくりあげるのにどのくらい時間がかかるものなんですか?

最短で1ヶ月かかります。というのも、植物タンニン鞣しの革は硬いので、形を覚えさせるために1週間ほど置いておく必要があるんです。いわゆる料理の下味と一緒。じっくり時間をかけて丁寧につくりあげています。

ー では、そんなこだわり抜かれた石丸さんの推しメンを教えてください!

はい。オーダー靴とベビーシューズですね。オーダー靴はその人の足のサイズにあったものを提供しています。

例えば、喜劇王チャールズ・チャップリンをイメージして作った靴『Charlie’s Oxford(チャーリーズ・オックスフォード)』。クラシックなオックスフォード靴をモチーフにしながらコロンとしたオデコスタイルがポイントです。

アンクルシューズもおすすめしたい1足。くるぶし丈の3ホールシューズで、短靴のシンプルさとショートブーツのホールド感を兼ね備えた靴です。シューホールが3つしかないので甲部を調整するときスムーズに開閉ができます。

続いて、モカシンタイプの本革ベビーシューズ。足首まで優しく包み込むデザインなので、赤ちゃんのプニっとした足でも安心して歩くことができます。

もちろんこのほかにもオーダーに合わせてつくらせていただきます。

ー かわいい靴ばかりで目移りしてしまいます!時間をじっくりかけている分、完成したときの達成感は並々ならないと思いますが…

それが、靴って完成したときが“完成”じゃないんですよ。僕が思う“完成”は、履いている人の日常が靴に移りこんで表情が出るときをいいます。手作りの靴がその人に寄り添えればいいなと思っていて、実際に「日常を旅する靴」というコンセプトでハンドメイドの靴を作っています。足にフィットして長時間履いても疲れにくく、丈夫で飽きのこないデザイン。この靴を履いていろいろな所へ行き、いろいろな人たちと出会ってほしい。そして、旅をするように日常を楽しんでもらえたらうれしいです。

ー 日常を旅する靴…とても素敵です。歩きやすさにもこだわっているのですね。

もちろんです。なかでも木型は、僕が独自に勉強してこだわったものを使っているために本当に歩きやすいデザインに仕上がります。さらに言えば、中底にもこだわっています。靴をずっと履いていると足の裏に汗をかきますよね?湿気を逃がさないといけないのに、一般的な中底には紙が使われていて湿気が逃げにくいって知ってましたか?ほら、スニーカーの上に穴が開いているのはそのためで、上から湿気を逃がすしかないからなんです。それに加えて紙の中底は逃げない水分をどんどん溜め込んでしまうから良質とはいえません。

うちの靴の中底は高級靴と変わらない革を使っています。この皮が靴をつくる材料の中で一番値が張るんです!でもやっぱりいい靴に仕上げたいから妥協はしません。料理で言うならば、「うちの店のダシには伊勢海老が使われている」ようなことと同じですかね。中底が硬く分厚い革でできているので履けば履くほどその人の足の形を覚えます。日常に寄り添うほどに馴染み込み、どんどん履きやすくなっていくのが、僕の作る靴の特徴ですね。

ー 靴職人として一番大切にしていることを教えてください!

まず、靴は買って履くものじゃないということを伝えたいです。よく靴を作っていると言うと「靴なんて作れるものなの?!」と驚かれることがあります。僕はそのイメージを変えたい。靴は、自分で作れるものなのだと。靴づくりをその人の日常にして、夢・目標・ライフワークにしてもらいたい。もっともっと寄り添って、それこそ毎日の料理と同じような距離感に靴づくりを置きたいんです。

壊れたら新しいものを買えばいいのではなく、10年、20年と長く使えるように自分で気軽に修理もできる。靴づくりの敷居を上げたくない。誰でもできるんだっていうことを知ってほしくて僕は下北沢で靴工房を開いていた頃から、手作り靴教室やワークショップを開催しています。オーダー靴だけでなく、場所も提供することで靴とのそんな関わり方をたくさんの人に共有していきたいと考えています。

ー 靴職人として第二の人生を歩んだわけですが、これから社会に出る若い人達にメッセージをお願いします!

ただ一つ、人生やりたいことをやった方が絶対にいいということを伝えたいです。大体のオトナは口をそろえてこう言うでしょう。「一番やりたいことをビジネスにするにはすごく難しい。だからそれは本業にするのではなく二番目(いわば趣味)にしておくのがベストだよ」と。それって、ウソ

ファッション誌の編集者から靴職人へと人生を大きく転換させた僕から、若者に伝えたい。なんでもそう、世の中の半分は嫌なことばかりですよ。だからなおさら、失敗したり迷ったり大きな壁にぶち当たったときに、それが本当にやりたいことじゃないとしんどくて耐えられないし、頑張れない

日本でよく言われている“石の上にも三年”って言葉は確かに大事。だけど、極論を言えばもしかしたら明日死ぬかもしれない。一度きりの人生なのだから、本能のままに今、やりたいと思ったことを好きなだけやればいいと思います。行き当たりばったりでもいいんです。その場その場でいろんな人に助けられ、なにか大切なことを気づかされることもあるでしょう。思いに正直に生きてください。

ー ありがとうございました。それでは最後に手作り靴教室について教えてください。

専門的な知識や技術がなくても大丈夫です!少人数制なのでそれぞれのペースで靴作りを楽しむことができます。世界にたった1つ、自分だけの靴を作ってみませんか?(お問い合わせはこちらから

靴づくりを日常に、こめられた熱い思い。

今回お邪魔した石丸靴工房さん。私も訪れる前は「靴って自分で作れるものなの?」と思っていました。しかし「人に本当に必要とされるただ一つのものを作りたい。」「時間をかけて自らの手で作り、日々の中で使う”良さ”を知ってほしい。」「普段何気なくする料理と同じ。」「親しみをこめ、もっと日常に寄り添った靴づくりを」…といった石丸さんの話を聴いているうちに、靴に対しての見方が少し変わりました。

インタビューの後半は人生相談のようになってしまいましたが、ありがたいお話を聴くことができました。同時に、石丸さんの生き方に深い感銘を受け、私もこれから頑張ろう!と思えるきっかけになりました。ありがとうございました!

店舗情報 石丸靴工房

住所:新潟県新潟市西区寺尾(寺尾駅から徒歩約10分)
連絡方法:こちらから
     ※工房への訪問は、メールで事前予約が必要。
営業時間:祝日を除く月~土曜日11:00~17:00
URL:ホームページ

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